もしも登山やトレッキング中、休憩ポイントにトイレが無かったら、皆さんはトイレどうしていますか?
今回は、登山者やハイカーによる「携帯トイレ」の自発的活用を啓発し、恵まれた日本の山岳遺産を守ろうとしている方々の話になります。
第7回 岳都・松本 山岳フォーラム2017が来月11月25日(土)と26日(日)の2日間、松本市内の「まつもと市民芸術館」にて開催されます。
こちらのイベントは、過去2回ほど展示ブース出展企業さんのお手伝いで参加した経緯があります。(今年も久し振りに参加予定です。)
当初は、電気や水もなく過酷な気温差のある北アルプスのトイレ事情を災害用携帯トイレの二次活用で改善するというマーケティング活動の一環での参加でした。(過去記事:防災用トイレは再利用される をご参照ください。)
「山岳フォーラム」という名前だけあり、毎年山小屋のご主人など山に因んだお仕事をされている方々も多くいらっしゃいます。その中でも特に私が北アルプスのトイレ事情にのめり込むきっかけをくれたのが、のりくら観光協会の方との出会いでした。
※2014年の第4回 山岳フォーラムでの一コマ。真ん中は「ほっ!トイレ」の社長さん。
その日、少し派手目な服装に身をまとった方が、私の支援先の展示物である「携帯トイレを利用したブース型トイレ(以降「携帯トイレ専用トイレブース」)」の前に現れました。この方こそが後に乗鞍高原内での携帯トイレ専用トイレブースの設置に一役買った「のりくら観光協会」の“ペンションMADONNA”の女将さんになります。
彼女いわく、トイレは女性の視点だと言います。それは、くしくも私がお手伝いしていた携帯トイレ「ほっ!トイレ」のコンセプトと全く同じものでした。(エクセルシア社のほっ!トイレ の製品紹介ページ)
冒頭に申し上げた
「もしも登山やトレッキング中、休憩ポイントにトイレが無かったら…?」
まだまだ男性の多くは「その辺でするよ~」が回答かと思います。でも女性の場合は厳しいでしょう。。例えばスノーハイクに乗鞍高原を訪れたハイカーは、冬場凍結する水洗トイレは閉鎖され使えません。またその辺でする訳にもいかず大変困る話なのです。
映画「岳」(小栗旬、長澤まさみ主演)にも出てくる描写ですが、山でのトイレは「キジ撃ち」「お花摘み」などと形容され、フィールドで“シ”ちゃうのが常でした。
でもヤマケイ(山と渓谷社)のOBが活躍する企業が発信した「富士山からはじめよう」を合言葉にいわゆる「山ガール」ブームに火がつくと山人気は年々伸び、山の自然で人が入っていく事ができるエリアにおいて「人のし尿」の絶対量が飽和状態を超えたのではないかと思います。(過去記事:今年の山トイレ活動をご参照ください。)
山岳地域でのトイレ問題は「利用者」だけの問題ではなく「観光業を営む者」「行政」そして「企業」を巻き込み、無視できないところまで来ていると言えます。バイオトイレ導入促進への関心が高まり環境省が本格的にそれに乗っかり始めたのもこの頃からでしょう。
ただ、バイオトイレって非常に高価なものも多いと聞きますし、ハイシーズンごとにトイレを設置したり仕舞ったりを余儀なくされるような場所(雪に閉ざされる、微生物が生きる温度を保てない等)では不向きだったりします。なので、電気も水も微生物も要らなく低コストで環境に配慮できる「携帯トイレ専用トイレブース」が乗鞍でも注目されたのだと思います。
※写真は、乗鞍高原内の実際の「携帯トイレ専用トイレブース」です。エクセルシア社のSNS投稿から勝手に拝借しました。すみません。
しかし、携帯トイレ専用トイレブースって、「はい設置しました!」で終わらないのですよね。いくら薬剤が「臭わなくする」といっても「し尿」は放置できず処理する必要があります。要は片付ける仕事が発生するのです。利用者の協力も当然必要ですが、そこで生活している人々が自然と対峙しながらこのトイレの問題に取り組み、努力で守り続けた結果に我々が「なーんだ、必要な時にトイレあるじゃん!」となっている事に気付きました。
この乗鞍高原における山トイレ活動(以降「トイレ設置推進隊プロジェクト」)に参加している方々が、シーズンごとにトイレブースを設置してはメンテナンスし、そしてシーズンオフに大切に仕舞い、また次のシーズンに設置しているという事を知ったのです。
※写真は、トイレ設置推進隊プロジェクトのSNS投稿より勝手に抜粋しました。すみません。大人4人で運んでいます。お疲れ様です。
こうした動きは、行政の枠をも超えるかもしれませんね。今年はトイレ設置推進隊プロジェクトに参加されている方々で「トイレサミット」なるものも開催されたようです。今まで「長野県~」「岐阜県~」みたいに行政区域別に分かれた活動を行っていた観光協会がお互い“トイレ”という課題をきっかけに集まって議論を始めたとの事です。環境省の事を悪く言うつもりはありませんが、お上のお達しよりも現場からの底上げパワーの方がずっと進んでいると感じました。それは机上の理論や慣例などに縛られること無く真に身に迫ったところから発せられる「何か」を原動力として活動するからなんだと思います。
トイレ設置推進隊プロジェクトの凄いところはまだあります。処理する「し尿」を「肥料」に変えて、花を育てよう!というのです。
※またまたトイレ設置推進隊プロジェクトの写真を勝手に拝借しました。
この写真も「トレハナ」というロゴもとても素敵だと思いました。何でも長野県の元気づくり支援金で携帯トイレ専用トイレブースの設置を推進し、そこから処理されるし尿を肥料に変える…「トレハナ」=トレッキングを楽しむ皆様にご協力いただく携帯トイレのし尿を肥料として再利用し栽培しています…という事だそうです。利用者はトイレでスッキリできて、花も育つという正に一石二鳥な話だったのですね!
乗鞍高原に行かれる機会がありましたら是非、携帯トイレ専用トイレブースを利用してみてください。