南の南…南アルプス南部は、登山好きや百名山ハンターの間でも後回しになっている方が多いと聞きます。御多分に漏れず僕もその1人です…なので今回は7月の4連休を利用してまずは光岳(てかりだけ)に行ってきました。
ガスってしまったが、今回「光石」まで足をのばしました。
究極の"エコ登山"の新聞記事を読み
先日、嫁の実家に立ち寄った際、お義母さんが、
「こんな記事出てるわよ…」
って、見せてもらった産経新聞の記事。こちらには南アルプス光岳での究極のエコ登山(トイレ完全持ち帰り)が紹介されていました。
【深層リポート】根付くか究極「エコ登山」 光岳に排泄物持ち帰りキャンプ(1/2ページ) - 産経ニュース
引用: 2021/7/3 産経新聞
一読し、すぐに心に響きました。コレ凄いです!
登山客は携帯トイレで用を足し、排泄物も持ち帰る必要がある。
とあります。登山口「芝沢」の先にある以前の登山口「易老渡(いろうど)」から光岳に向かう登山道を2時間程登った所にある「面平(めんだいら)」に携帯トイレによる"自身の排泄物の持ち帰り"を条件としたキャンプ場が令和3年の今年登場したという事です。
昭文社「山と高原地図2021版」には、しっかり「エコ登山」キャンプ場と記載があります。個人テントは張れません。
今年度は、利用条件もあるようですので、現地にご確認ください。
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しみじみと共感を得ました。南アルプスは「塩見小屋」でも携帯トイレが一般化されています。北アルプス乗鞍頂上小屋でも同様なシステムを導入(乗鞍岳、剣ヶ峰まで携帯トイレを届ける - ワンゲル部の記録長さん)しておりますが、南アルプスは北アルプスと違い山の懐が深く、入山者も多くは無い為、こういった思い切ったエコな施策は実行に移しやすいのでは?と感じました。
早速、運営元の南信州観光公社に電話アポを取り、その実態を視察し体験してみる事にしました。
旧木沢小学校で貴重なお話を伺う
連休初日は自宅から遠山郷まで移動だけで終わってしまいました。都心からはなかなかアプローチの遠いエリアです。翌朝、木造校舎で有名らしい旧木沢小学校に行くと新聞記事に出ておりました登山界の大御所(恐れ多い…)大蔵さんが笑顔でお迎えくださいました。
地域振興の拠点でもある旧木沢小学校
そこで山とトイレについて、大変貴重なご経験とお話を伺う事が出来ました。「うんちの話」一つとってみても「自然と共に」という極々シンプル且つ明快な内容で、とても分かりやすかったです。一昔前はトイレから堆肥を作り食物を育てるという究極のサステナブルを自然に寄り添い実現していた訳ですが、主に戦後は化学肥料が中心となりトイレ事情も"水に流す"事で正に臭い物に蓋をしてきたと改めて気付かされました。
ただ「うんち」はそのまま土に還してはいけません。富栄養化や大腸菌などによる汚染の原因にもなります。そこで、コンポスト的な考えが必要になるのですが、、その前に「登山者は、山には"うんち"は置いてこない」を徹底する必要があるという訳です。
詳細は、同行頂いた携帯トイレメーカーのエクセルシアさん(Excelcior)のホームページ等を通じて改めてお伝えしたいと思います。
面平のエコ登山キャンプ場とは何なのか?
すれ違う登山客もほぼ認知していなかった面平(標高1,480m)のエコ登山キャンプ場とは何なのだろうか?どのように利用できるのだろうか?排泄物持ち帰りのシステムは?見て触れてみたい事が沢山あります。早速、易老渡から面平に向かってみる事にしました。
◾️今回のコース
7/23 10:30 易老渡(883m)出発 → 12:30 面平(1,480m)到着 ※ エコ登山キャンプ場に宿泊
7/24 4:30 面平出発 → 7:45 易老岳 → 10:20 静高平(水場) → 10:45〜11:15 光岳小屋→ 11:30 光岳(2,591m) → 11:45〜12:00 光石 → 12:30〜12:45 光岳小屋(お昼ご飯) → 17:05 面平到着 ※宿泊
7/25 6:00 面平出発 → 7:30 易老渡到着
途中、日本のチロルで有名な下栗の里のビューポイントがあります。
芝沢の駐車場は4連休で溢れかえっていました。こんなに混むことは無いそうです。。88台ほど停まっていました。
芝沢を後にして易老渡にある橋を渡った所から急登が始まります。
2時間程登った所に面平のエコ登山キャンプ場が現れました。
急登で早速バテました笑。面平で少しだけ登山道を左に逸れると面平のエコ登山キャンプ場が現れました!登山道から外れる為、気づかない方も多いと思います。
久々のテント泊なので、色々持ってきたのですが、な、なんと、こちらキャンプに必要な道具はほぼ揃っていました。
有料ですが、ガスボンベ、コンロ、コッフェルなど一通り揃っていて使用できます。水場は無いので持ち込みました。最近「北アルプスの天然水」のパッケージになったサントリーの水を南アルプスで頂く。
設営済みのテント内には、マットレスとフライシート生地で作ったシーツが!あと、シュラフがあれば天国です。マットレスが濡れないよう使用後は立てておきます。
荷物ケースやテントには鍵がかかっています。許可を受けて有料で使用します。
という訳で、手ぶらに近い形で利用できるキャンプ場でした。革新的だ!
少し離れたところにトイレテントがあります。
では、本題のトイレも視察して参ります。
いわゆる防災用テント?
屋久島とかでも見かける縦長テントのトイレです。テントサイトからは「空き/使用中」の札があり、裏に回るとテントの入り口がありました。中に便座のみ置いてありました。
こんな感じです。
こちらにビニール袋を敷いて携帯トイレ薬剤を入れて使用できました。ただ排泄物は持ち帰りです。ジップロックのビニール袋に入れて持ち歩く事にしました。快適すぎて結局2泊してしまいました。
静かな森の中にある素敵なエコ登山キャンプ場
ミズナラ=どんぐりの木
ミズナラの木などが生い茂る森がとても居心地良かったです。
翌日、光岳を目指す
元々の予定では、面平から光岳小屋(今シーズンは休業で避難小屋として利用可)に行き、そこで宿泊しようと思っていましたが、下山者の方より「小屋はギュウギュウ詰めだったぞー」のお言葉を頂戴しておりました為、急遽面平から光岳までを往復する事にしました。
朝は超良い天気です。
苔が綺麗な森です。易老岳まで一気に登ります。
面平で泊まるメリットは光岳までの高低差を600m、行程を2時間節約できる点にあると思います。強者登山者は芝沢の駐車場から光岳日帰り登山などされていますが、私のような貧脚には到底無理な話です。なので面平で泊まれるのは大変ありがたいです。敬遠しがちだった"南の南"が少し近づいた感覚です。易老岳を過ぎると一瞬開けます。でもまたすぐ森の中です笑笑
天気の良いうちに距離を稼ぎます。南アルプスはアップダウンも激しく、スケールも大きいので、とにかく「まだ着かないのぉ〜?」ってなります。
2日目は12時間は歩く予定です。水場も静高平(せいこうだいら)まで無い為、やはり2-3Lは持っていかないと心配です。キツいゴーロの谷筋の登りが終わるとようやく水場です。
静高平の水場では、ジャブジャブ水が出ていました。良かった…
イザルヶ岳方面の標識
足に優しい木道
県営光岳小屋が見えてきました
やっとの事で光岳小屋に到着しました。連休も3日目の為、噂ほど混んではいませんでした。
軽くトイレの視察をします。
通常の外トイレは休業中につき使用禁止。鍵がかかっていました。カートリッジ式トイレなのかな?
離れのトイレ小屋は常時空いている様子でした。
トイレの中の様子です。ハエやアブが飛びまくっており、臭いもキツかったです。
ちり紙は便槽に入れず箱に捨てます。
いわゆる浸透式のポットントイレのようです。トイレ小屋の手前にパイプでつながった浄化水槽のようなものがありましたが、小便用なのでしょうか?今回はトイレ完全持ち帰りの為、こちらのトイレは使用せず、敢えて携帯トイレを使用しました。次はいよいよ山頂です。
展望のない光岳山頂ですが…
小屋から15分ほどで光岳山頂に到着しました。残念ながら森の中です。南アルプスだと緯度の関係か2,600m弱だと森林限界はまだまだです。あと100mは登らないとですね💦
おつかれっす。光岳山頂っす。
光石まで行ってみる事にしました。7分とありますが、倍の15分はかかります…
光石まで7分?
標高2,489mの光石まで降ります。
日が陰ってきて残念。
白い花崗岩の岩場が現れました。遠州側から見ると夕日にこの岩が照らされ白く光ることが光岳の名前の由来だそうです。
ガスっちゃいました。富士山も見えません…
登り7時間強…疲れました。これから同じ道を降ります。
テント場に到着…クタクタです。
面平には17時過ぎに到着しました。18時過ぎから雨も降り出しテントもしっとりと濡れ、霧に煙る幻想的な景観となりました。朝4時半にスタートしたので12時間半も歩きました。
最終日は再び旧木沢小学校へ
長いようで短かった面平及び光岳山頂トイレ視察の旅もいよいよラストが近づきました。
タマゴダケ!
前日の疲れが残ったままの状態で、面平から易老渡までの急登を降るのはかなり辛かったです。足がもつれちゃう…
易老渡です。お疲れ様でした。
良い天気やー。3日間とも道中雨に降られ無かったー。
昔みたいに易老渡の駐車場に車を停められたら楽なのにー、、
なんとか易老渡に到着しました。ここから芝沢へ向かい、再び旧木沢小学校へ向かいました。
小学校に着くと、携帯トイレ回収ボックスが設置されていました。このように人の管理下で処理後物の回収ができる環境の方が余計なゴミを捨てられたりしないので、まだまだ安心ですよね。
こんな感じで回収されていきます。14-5名で満タンになってしまう事もあるそうです。
反省会をします
下山後、面平のエコ登山キャンプ場についてのアンケートがありました。今回感じた事をつらつらと書かさせて頂きました。
現地の自然を守る気持ちやそれを維持する努力、そして登山者のモラルがあって成立しているんだと実感しました。
木沢小学校校長先生のたかねさん
今後、面平同様のテントサイトの展開もお考えのようですので、トイレの持ち帰りは益々普及しなければですね。。
今回の4連休の混雑ぶりから芝沢駐車場でのトイレも課題となるでしょう。光岳小屋のトイレは?みたいな事を考え、それぞれにフィットしたエコなトイレ像について、何となく考え始めました。ポイントは「自然と共に」だと思います。"エコな登山スタイル"がここ南アルプスより発信されると良いと思います!