ワンゲル部の記録長さん

山ですぐバテちゃう記録長さんの日記

乗鞍、十石山のトイレ問題を考える

北アルプス乗鞍岳は23の峰から成り立ちます。今回はその内の一つである十石山に登ってきました。槍穂が見える雄大な景色を楽しめるコースです。(2018.10.26)

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昨年の山岳フォーラムで、十石山は携帯トイレ向きの山なのではないかという話が出て以来、携帯トイレの会社社長から一度視察登山をしようと誘われており、このタイミグになった感じです。

今回は乗鞍観光協会のガイド「ミネちゃん」(ゴールデンウィーク後半は乗鞍岳BCツアーに参加でお世話になったガイドさんです。)の案内で畳平から白骨温泉に抜けるコースを行くことにしました。

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■権現社から十石山へ至る道は危険がいっぱい

このコースの核心部「金山岩」付近は正規な登山道ではありません。。乗鞍権現社から金山岩を経て十石山に向かうルートは崩落が進んでおり、特に岩場を支えている土の部分から崩れておりかなり危険な状態でした。また年間を通して登山客が少ないためか、ハイマツの強烈な藪漕ぎが必須なため、実際にこれから十石山に行く方は白骨温泉からのピストンコースが断然おススメです。

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朝一のバスで畳平まで行き、8時過ぎに出発しました。快晴です!
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ここのところ少し暖かかったそうですが、キュッと冷え込んでこんなに立派な霜柱が至る所に出来ていました。
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天然のブルーベリーに、
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天然のコケモモです。ブルーベリーは甘酸っぱく、コケモモは梅のような酸っぱさでした。
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権現社が近づくと、今年の夏に整備をした階段が出てきました。整備した方の名前入りです。これはCloud fundingで集めたお金で参加者が作成したものだと説明を受けました。なので、権現社までは非常に快適に歩くことができました。素晴らしい取り組みですね。
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権現社に到着です。この祠の右手裏より藪漕ぎ開始です。
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こんな道や、
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こんな道を、、
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笹やシャクナゲを頼りに歩いて行きます。
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金山岩付近は左側がスパッと崩れておりなかなかの高度感があります。
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十石山が近づいてきました。なかなかアルペンな道を先行するお仲間さん。。
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雲が出て来ました。でも風もほとんど無く快適です。
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12時45分、十石山の小屋が見えてきました。山頂はすぐそこです。
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山頂到着~♪ 十石山の山頂は殺風景ですね。

十石峠避難小屋のトイレ事情

今回の登山は、十石峠避難小屋でのトイレ事情について視察することが目的となります。さっそく小屋の中やトイレをチェックしていきます。

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50年は朽ちることがないであろうと言われているだけに非常にしっかりした造りの小屋になります。建設当時は現地のある志を持った方々を中心に総工費、数千万円をかけて建てた小屋になるそうです。現在は「十石峠避難小屋を守る会」によりきっちりとメンテナンスされておりますが、これを維持管理していくことはとても大変だと感じました。

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広間と小部屋が3室、内1室はロフトになります。土間にはプロパンガスとコンロまで置いてある豪華っぷりです。

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天水を集めて水を確保する仕組みがありましたが、水はほとんど溜まっていませんでした。

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入口すぐのところに物置スペースがありましたので、例えばここを整理してドアを付け、携帯トイレ用のスペースを作る(便座だけ設置し、出した「し尿」は登山者がお持ち帰り)というのはどうか?とも思います。

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現在のトイレはというと、小屋から1分ほど下った斜面にあります。かなり開放的な感じです。

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板を組んだだけの簡単なものです。「し尿」が下に流れていくように溝が掘ってあります。地元の小学生がこれを見たときに「男女一緒かよガハハハッ」みたいな話があがったらしいですが、おっしゃる通りさすがに開放的すぎますよね。。

十石峠避難小屋の宿帳から年間100名ほどが小屋を利用しているのでは?との事です。この人数でも今現在はトイレで出た「し尿」は山に浸透させているという事なのだと思います。我々の活動としては「し尿」は一切山に浸透させるべきではないという考えをベースにしておりますので、持ち帰るか分解するかしか無いという事になります。ただこれだけの高所では「バイオトイレ」の微生物は活動できず分解は厳しいと思われるので「携帯トイレ」お持ち帰り作戦が良いという話になるのかなぁと思います。要は適材適所の考え方ですね。

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小屋裏の高台からは美しい穂高連峰を眺めることができました。この素晴らしい自然を登山者一人ひとりの真心で守っていきたいですね。

白骨温泉までの登山道は今でも整備をしてくださっている方がいます

五合目まで下ってきたときに、新しめの五合目の看板がありました。これは最近になって設置されたものだそうです。
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先月9月には台風で多くの倒木による被害が出たそうですが、今では登山道をふさいだ倒木はチェーンソーで綺麗にカットされ、とても歩きやすい道になっていました。

通常小屋の方を中心に登山道整備をする話がありますが、ここ十石山では避難小屋しかないため、その資金を集めることが困難です。小屋の中には「カンパ箱」がありましたが、泊まられる方は、小屋の維持管理だけでなく、トイレや登山道整備のことを考慮し数千円は支払ったとしても全然その恩恵にあずかれるのだと感じました。
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白骨温泉が近づくにつれ、紅葉シーズンの終わりを感じさせるカラマツの見事な黄色い葉が見られました。下山時刻16時30分。休憩や視察も含んでではありますが8時間半の行程となかなかハードでした。今回は天気も良く順調でしたが、常にこのような好条件が揃うわけではないので、次回はゆっくり白骨温泉から登って避難小屋に一泊してみたいと思います。